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▽ 有村竜太朗 寫眞作品集『月令月映/getsureitsukuhae』/ 映像作品集『月令令寫/getsureireisha』発売記念 寫眞展『月令/getsurei』インタビュー

カテゴリーの枠を超え、次々とその枝葉を広げていく有村竜太朗ソロワーク「月令/getsurei」が、
新たに寫眞集としてお目見えします。これまでに発表された「月令/getsurei」寫眞のアザーカットをはじめ、
撮り下しの作品を収録。また、セット販売のみとなる映像作品集「月令令寫 / getsureireisha」には、
これまでに配信された「月令/getsurei」全3公演のライブ映像の他、特典映像も多数収録。
この発売を記念して、2021年5月に「寫眞展 月令/getsurei」を開催。
急ピッチで進められるその準備には有村竜太朗氏の並々ならぬ熱情が注がれていると聞き、
そのありのままの心に耳を傾けてみました。

 

【ソロワーク『月令/getsurei』について】

--まずは今回の一連の作品群をひもとくにあたり、活動のなりたちから伺っていきたいと思います。
まずは配信ライブ『月令/getsurei』を始められたきっかけから伺いたいのですが。

有村「きっかけはコロナ禍になったことですね。
これまで僕がやってきたソロ活動も2020年の3月に予定されていた
マイナビ赤坂BLITZでのライブが5月に延期になって、それもなくなってしまって。
自分としては前年からの流れもあってとても大事にしていた公演だったのと、
その場所ではもう最後だったということもあって、気持ち的には“奪われてしまった”
みたいな形で心に残ってしまったんですよね。喪失感が生まれて、正直その時は結構凹みました。
でも、時間が経つにつれて“これはしょうがないことだから、
コロナ禍でできることをするしかない”って考えて、何か自分から発信できる場を持ちたいと思った時に、
自分の音楽ならではのことをしたいと考えたんです。
それも“Plastic Treeとはまた違う、自分の中でのコアなこと”ってなったときに、
今までの『デも/demo』っていうアルバム2枚と、「op」っていう楽曲も含めて、
自分の作ってきたものが消去法ではなく“無観客配信”っていうものにはまる気がしたんですよ。

もともと個人活動は自分の音楽活動の中で実験的なことをできる場だったし、する場にしたかったし。
だから、楽曲自体を“無観客の映像”っていう、
ある種無機質なものにはめ込んで研究する価値があるなって思い始めて。
一つ大きなテーマとして、今置かれている状況がすぐには元通りにならないなら、
その決められた世界に入れ込んで表現しなきゃな、
実験と研究を繰り返してみようかなって思って(笑)
その時になんとなく『月令』っていう言葉が浮かんだんですよね。
俺、そういう物事の名前をつける時っていっつもすごく悩むんですけど、
これに関しては何も悩まなくて。」

 

--どうしてでしょうね。

有村「一番はまる言葉はなんだろうって考えた時に『月令』だったんですよね。
なんかちょっと“命令”とか、“指令”とか、そういうお告げ的なものっていうか。
“やらなきゃならない”“やらねばならない”そういう感覚だった。
自分がやりたいっていう気持ちはもちろんなんだけど、
それよりもっと、ある種の使命感みたいなもの。
で、その使命は誰に言われたのっていったら自分なんですけど、
その自分が自分に指令を出すときに何を投影するかっていったら、
俺はなんか“月”だったんですよね。
大きなものに命令されているような気持ちになりたいというか、
なったというとちょっと宗教っぽくなっちゃいますけど、そういうふうになりたいなって。
で、自分の音楽性を考えた時に“月”だったから、『月令』。
これだったら、自分がこの先研究としてしばらくやることを前向きに捉えられるというか、
捉えたいというか。だからその言葉を決めてから、
ものすごく具体的にやりたいことが決まっていきましたね。
この会場でいついつやりたいとか、こういう演出がしたいとか。
Plastic Treeと二人三脚ですけど、こういうことをしたかった、ああいうことをしたかった、
っていうことがどんどん出てきて。映像ならではの実験的なこと。
普通にお客さんを入れるとできないようなことをしたいなぁって。
Plastic Treeは映像配信の最初からお客さんがいてくれたからお客さんと空気を作るっていうか、
やっぱりバンドだからそれがすごくよかったと思うんですけど、
ソロの場合はもうちょっと閉じた世界っていうか。
その扉の奥だから“無観客配信”っていうのが合ったのかなって。
もちろん一抹の寂しさはあるけど、で、その寂しさを解消するために
『内あ外/uchiage』(打ち上げ配信)があると思うんですけど(笑)。
けどなんか、それはそれで、自分の音楽を聴きたいっていう人とも、
いいコミュニケーションをとれると思ったんですよね。

このコロナ禍で、ミュージシャンとか音楽家の、
命の火みたいなものが結構揺らいだし、ちっちゃくなったし。
もちろん僕もそのうちの一つで、バンドは4つの火だったけど、僕はやっぱり1つの火だったから。
それはもう、気力だったり、ドキドキする楽しみだったり、
誰かが見てくれる、聴いてくれるっていう嬉しさだったり、
いろんな材料があって燃えてるんですけど、ほんとにね、結構揺らいでたから。
今でも吹けば飛ぶような怖さも脆さもどっかにあるし、まだ揺らいでますけど、
この『月令/getsurei』をすることによって、絶えなくいけたかなと思います。
ちゃんと薪をくべられたかなっていう、なんか、そういうイメージなんですよね。」

 

--ソロアーティストとしての竜太朗さんにとって、一番の薪は何だと思われますか?

有村「何だろう、感覚的に言うと、やっぱもやもやしているものじゃないですかね。
たぶん。もやもやとしか言いようがないかな。」

 

--もやもや、ですか。
でも、『月令/getsurei』には最初から確固たるイメージがあって、
しかもそこに至るまでのスピードがとても速かったですよね。

有村「たぶん、本来は時間がかかるはずの人間なんですけど。
ずっとバンドをやってきた中で、今も思うし、昔からも思ってたし、
っていうものがあったんですよね。もちろんバンドは大好きだし、僕のバンドはプラだし、
“バンドだからできたこと”の方が多いんだけど、逆に“バンドだからできなかったこと”
っていうのも僕個人としてはたくさんあったかなって。
それはメンバー云々ではなく、バンドというシステム自体の関係で、
いろんな要因があるんですけど、個人だとその辺がもうちょっとフリーになるっていう。
特に音楽とは別の部分でそれがあったから、
そこを特に形に残したかったっていうのがやっぱりあったんじゃないかな。
それは全然ネガティブには考えていなかったんで。
ただ、“ああいうことできたのにな”“こういうことできたのにな”っていうのは、
自分の頭の中には設計図があって、ずっと手を付けていなかっただけだったから。
っていう状態に近かったんですよね。」

 

--それが形になるときが来たっていう感じだったんですね。

有村「そうですね。」

 


【寫眞集『月令月映 / getsureitsukuhae』について】

--そしてまた、今回の寫眞展も、急ピッチで進められていると伺いました。

有村「そうですね。ああ、だから、その時に近いものはあります。
ソロをやるって決めた時と、『月令/getsurei』をやるって決めた時と、
寫眞展をやりたいってなった時と。
なんか、突き動かされる感じに近いっていうか、指令のような。同じ気持ちでしたね。
自分の中で“こういうことをやったら面白そう”“ワクワクするなぁ”とか“作ってみたいなぁ”って思って。
きっとそれを喜んでくれる人もいるだろうな、一緒に遊んでくれる人がいるなら、
そのきっかけづくりにしたいな、っていう感覚ですかね。」

 

--今回、どうしてそれが寫眞展という形だったのでしょう?

有村「寫眞展も寫眞集も、考え始めたのは本当に最近です。
最初に話したとおり、やっぱり去年から通常の音楽活動ができていないので、
当然撮影する写真の量も減るわけで。
も、やっぱ俺、写真で何かを表現するのって好きなんですよね。
撮ったり撮られたりして考えたり、もう、撮影自体が。
まあ、腐ってもビジュアル系かなと(笑)。
写真撮影って、朝も早いし面倒くさいことも多いんですけど、
でも、さっきのもやもやを薪にくべるのと似てて、
それが具現化されて良い写真ができたりすると、
なんか心が落ち着くな、みたいな。」

 

--「“これこれ!”みたいな。」

有村「そうそう。なんか飢えが満たされるというか。
だからそれが減ってしまったことで、去年はやっぱりフラストレーションがありました。
でも、ソロっていう個人活動だと、自分発信で撮影を進めることができるんですよ。
なので、むかしから友達の寫眞館GELATINさんに撮ってもらいました。
お互いアーティスト同士で刺激し合ってきた、いわゆる竹馬の友なんですが(笑)
そういう話をしたら「撮りたい」って言ってくれたんです。
で、共通の友人でもあるメイクアップアーティストの田端千夏さんにも
同じように話したら「メイクしたい」って言ってくれて。
本来の言葉の意味に当てはまるかどうかわからないんですけど、
カメラマンさんとかメイクさんが商業目的じゃなく
「自分はこういうことを表現したいんです」っていう“作品撮り”っていうのに近かったんですよ。
『月令/getsurei』という“作品撮り”のために、一番最初に俺が「写真撮ろうよ」って言って、
「私やるよ」「私もやるよ」って。
そしたらずっとお世話になっているデザイナーの山本さんも加わってくれて。
そうなったら「じゃあ俺がスタジオ押さえるね」ってなって、俺も自分で車運転して。
しかも深夜に。それがすごく楽しかったんですよね。
そしたらすごくいいのが撮れて「わぁ、すごい!」って。

今まで散々撮影してきてるのに、思えばそういうのってここ数年なかったんですよ。
やっぱりいつもはね、雑誌のカメラマンさんが仕切ってやってくれて、とかなんですけど、
その時はほんとに手弁当みたいなのをやったから。
それで、お互いに「こういうことが続くなら、これはこれで追求してみよう」
みたいな感じで撮り貯めていったらどんどん増えてて。
しかも、寫眞って切り取られるから、“作品撮り”してるっていう
モチベーションの上がり方がちゃんとその中に残ってるんですよね。
被写体としての俺もそうだし、撮ってるGELATINさんもそうだし、
関わってくれている千夏さんも山本さんもそうだし。
たぶん、その2回目の撮影くらいから、
これはもしかしたら作品としてひとつの形にしてもいいかな
っていうふうに思えたんだと思います。
実際そういう意見も出たんですけど、ただ、そうするには量が足りなかったんですよね。
でも、ただ撮ればいいっていうわけではないから、
“こういう寫眞を撮りたかった”“欲しかった”“見たかった”みたいな、
そういうものにしたいなぁと思って。
そしたら、最終的にあんなことになりました(笑)「ロケ、行こう!」みたいな。」

 

--結果的にものすごい分量になったと伺っていますが。

有村「分量もすごいし、撮影の工程も割と大掛かりなことになりつつ。
でも、やっぱりそうやって、最初のチームでやってたら、だんだんと撮影に人が増えていく感じ。」

 

--輪が広がっていく感じですね。

有村「フライヤーの寫眞に使われているペーパームーンは
3回目のライブ配信に使ったんですけど、友達に連絡して
「ちょっと作れない?」って言ったら
「俺には無理ですけど友達にならいるかもしれないです」って紹介してくれて。」

 

--ええっ!? 軽くおっしゃいますが、すごいクオリティーじゃないですか!

有村「すごいクオリティーなんですよ。(真顔)
しかも、僕も実は実物見たことなかったから、ペーパームーンって。(笑)
映画とか写真ではあるけど、実際どうなっているのかなって。
ただ、舞台美術は好きだし、プラのライブでもよく話をする部分だし、
最低限の経験はあるから「書き割りでこんな感じにしたいんです」っていうのを伝えて。」

 

--それであれが出来上がるとは。やはり類は友を呼ぶというか、呼び寄せてしまうんですね。

有村「製作現場から「こんな感じで今作ってます」
っていうのが送られてくるんですけど、やっぱ、熱くなりました。」

 

--プロフェッショナルですね!

有村「ほんと、支えられてやれてるなーと実感します(笑)。
だからいい寫眞集になればいいなと思います。」

 

--これまで発表されている寫眞を拝見しても、
これはどうなっているんだろう、ここはどこなんだろと考えてしまうような、
興味を引く作品ばかりですが、ご自分ではどんなふうに感じられていますか? 

有村「やっぱ、非日常感で遊ぶのが好きなんでしょうね。
寫眞上だけどあの中に居れる楽しさみたいなものはあるかもしれない。うん。遊び気分なんですよね。」

 

--それはある意味誰よりもGELATINさんの世界を古くから
知っていらっしゃる竜太朗さんにしか言えないお言葉かもしれません。

有村「友人ですしね。でも、友人になる前にはやっぱり
「すごくいい写真、面白い写真を撮るね」みたいな感じだったんですよ。
当時の俺もまだ21~2歳だったし、写真の撮影をされた経験も知識もなかったんですけど、
そのころから「俺、こういう写真好きだよ、かっこいい写真だね」っていう。
「俺、なんも知らんけどわかるよ」みたいな。(笑)」


--千夏さんも同じ頃から?

有村「千夏さんはデビューして1年ちょっとくらいからだから、
もうちょっとあとですね。すごくいいなぁと思った写真があって、
このメイクさんにメイクしてもらいたいって事務所に俺が言って。
もちろん忙しい方だからタイミングもありますけど、
今もメインでやってもらってます。」

 

--じゃあ、リラックスして。

有村「うん。そのチームじゃないとちょっと難しかったかもしれないですね。
なにしろ大変は大変でしたから。
でも、やっぱりやるなら意味あるものにしたかったんですよ。
それで、3回目の撮影にロケで行った時に、
あぁ、この世界観の場所があったらいいなって思ったんですよね。」

 

--すごくよくわかります。

有村「自分もそこに行ってみたいし。うん。
だから、全部“自分の欲しいもの”“聴きたいもの”“見たいもの”“行きたいところ”っていうのが、
たぶん基本にあって、そこから全部始まってる感じがします。
これって、さっきの薪の話の答えにもなるんじゃないですかね。
たまたまその対象が俺なだけであって。
特にメイクもしてて、ああなると、俺であって俺じゃないんですよね、どっか。(笑)
でも、こんな感じのやつがいて、こんな写真撮ったら、
よくわかんないけど俺は好きだなって言える。なんか面白いなって。」

 

--どこか自分じゃないなにかを見ている感じもあるんですか?

有村「ありますあります。それはプラの時にもあるし。
プラも、こんなバンドっていたら面白いのになっていう感じだから。」

 

--それが実現できているって、とても幸せなことですね。

有村「そうですね。こんなメイクして、こんな、なんかたまに角とか生えてて(笑)
けど、音楽はこんな音楽なんだっていう。こんなバンドいたら面白いなぁみたいな。
それはよくプラでも思うことなんですけど、まあソロも同じで。
こんな感じのこんな人がいて、こんなことやってて、
こんな写真があったら面白そうだなって。
そういうものをたくさん見せたいし、そういう空間を作ってみたいと思ったんですよ。」

 

--そこから寫眞展への発想につながっていくわけですね。

 

【寫眞展『月令/getsurei』について】

有村「今、世の中がこういう状況になって改めて、
どこか用意された場所や目的地に行くことって、
すごく価値のあることだと思ったんです。
自分も、まあすごくよく行くわけではないんですけど、
たまに退屈だなぁと思って美術館とかに行ったりすると、
いつも思っていたより「来てよかったなぁ」って思うんですよ。
いつもと違う場所に自分の身を置けたこととか、
いつもと違う気持ちで何かものを見るとか、とても意味があるなぁと。
なんか、ちょっと満たされたような気分と、
少し自分のインプットが増えたような気になって帰ってくるんですよね。
だから、寫眞展『月令/getsurei』が、
ちょっとでもそういう場所になれたらいいなぁと思って。」

 

--会場にもとてもこだわりを感じますが、どのように選ばれたのですか?

有村「僕にとっても初めての事なんで、
これも古くから付き合いのあるスタッフに「どっかいいとこない?」って
聞いて候補を出してもらいました。選んだ理由は超シンプルで、
一番写真で気になって、実際そこに行ってみて、
行ったらここしかないなって思ったから。行ったら「絶対ここでやりたい」って。
そこにみんなを連れて行きたいって思ったんです。
「絶対好きだろうな、だって俺がめちゃめちゃ好きだもん」って思って。
ちょっと「見つけちゃったよー」みたいな感じでしたね(笑)
今はその場所で、あれもしたいこれもしたいっていう衝動でいっぱいな感じ。」

 

--フル回転ですね。

有村「そうなんですよ。
こういう寫眞が並ぶならこういう音楽を作りたいなと思い立ったりとか。
今回、ライブ撮影を3回しているから寫眞集自体も3部構成になっているんですよ。
なので、アンビエントを3曲作ってみました。それも楽しかったですね、すごく。」

 

--それも新しい試みではないですか?

有村「そうですね。ブランド(the closet)とかの音楽だったり、
インスト曲とかは作ったことはあったんですが、
あそこまで、所謂アンビエントをちゃんと作ってみようと思ったのは
…初めてになるのかなぁ?SEっぽい曲はあるけど。」

 

--かなり本格的で個性的ですよね。どのように作っていかれたんですか?

有村「まず3曲とも俺が楽器を弾いてないんですよ。
いろんな音を出すものをサンプリングで自分で落として。
たとえば、今つけてるピアスもそうなんですけど、このピアスを、
自分の家にある金属のアクセサリー入れに何回も落として撮ったりとか。
自分の家で宅録したので、本棚からいっぱい本を出してきて、
本をバタバタバタっと落として、それをゴッパ(SM58ボーカルマイクロホン)で録って。」

 

--そうだったんですね。不思議な音がたくさん聞こえるなあと思ってました。

有村「マニピュレーターで入っていただいた方が、
プラでもやってもらっているウエケンさんというエンジニアさんなんですけど、
実験創作に付き合ってくれる人で、そういうほうが好きだから、
「楽器じゃない音をいっぱい録ろうよ」「そうしましょう!」っていうことで、
その場にある音の鳴らせるものをたくさん持ってきて。
それが1曲目の「脚本」。2曲目の「脚光」は自分の声を、
上から下まで全部のキーをぎりぎりの持続音で録って
取り込んだものでメロディーを構成してるんですよ。」

 

--シーケンサーの音源じゃないんですね。

有村「あれは僕の声なんですよ。」

 

--それは知っておきたい情報ですね!

有村「3曲目は何やったかちょっと忘れちゃったんですけど(笑)
なんかねえ、エンジニアさんと一緒に
「こういう写真なんすけど、どういう音を聴きたいですかねぇ」
っていうところから始めたんですよね。
iPadを置いて写真を眺めながら、う~ん(考えるポーズ)っていう。
で、そのエンジニアさんもそういうタイプだから、
「どういう気持ちでこの時は撮ったの?」とか。
「どういう気持ち…眠かったかなぁ」「なるほどぉ」とか(笑)。」

 

--本当に手作りなんですね。全部に竜太朗さんの意志が反映されて。

有村「うん。やっぱ、自分の血はちゃんと入れたいなって。
せっかくアンビを徹底的に作るなら。
でも楽器は弾きたくないな、弾かないほうがいいなって。」

 

--ちなみに、ライブ活動と、今回の寫眞展の関係性というのは?

有村「似てるところはあります。ひとさまをお呼びすることに対しての。
何故呼ぶのかという。何を表現したいから呼ぶのか、とか、
何を伝えたいから呼ぶのか、とか。
その中身はいろいろあると思うんですけど、
たぶん“人を呼ぶ”ということに特化したい自分の中の衝動みたいなものは似てますね。
違うところは全然違いますけど。
頭の中を見せるような感覚は同じなんだけど、
ライブとは違って寫眞展はあんまり肉体的じゃないかな。」

 

--『月令/getsurei』にあてはめるとどうですか?

有村「配信ライブの『月令/getsurei』は、中心として俺が動く、俺が歌う。
そこにいる俺はひとりなんですけど、寫眞展の『月令/getsurei』は、
みんなが中心で動いてて、みんながそこで呼吸して。
そこにいろんな形になってる俺がいて。それが俺じゃなくてもいいんですけど(笑)。
“こういところがあったら行きたかったんだけどなぁ、 
でも行ったことないなぁ”みたいなところになってくれたら。
 で、“またこういうところがあったら行きたいな”って思ってくれるような、 
そんな感じの場になってくれたらいいなあって思います。 
そのために全力になれたらいいなぁと思って、今、全力になってます。(笑) 
でもほんとに、いろんな縁にも恵まれてるし、なれそうな予感がするんですよねぇ。」


--それでは、最後に寫眞展『月令/getsurei』で一番見て欲しいところをお聞かせください。

有村「見て欲しいところ、っていうのは僕からはないかな。
ただ、もし理想どおりできたとしたら、
そこに自分がいることを楽しんでほしいなって思いますね。
好きに遊んで欲しい。
寫眞ずっと見て、寫眞に、極端にいうと額縁の中に入り込んでもらってもいいし、
その寫眞のある空間自体にいることを楽しんでもらってもいいし。
そこが気に入ったら、そこで本を読んでいてくれても俺的には
全然いいくらいの感じなんですよね。
なんなら撮影でつかったペーパームーンも置いときますんで、
それに座って楽しんでもらってもいいし。」

 

--素敵ですね。ある意味『月令アミューズメントパーク』というような。

有村「なんか、うん。好きにそこにあるものを使って
自分に合う遊び方を見つけてくれたら、作った側としては本望です。」

 

(取材・記事 吉野淡雪)