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▽ 有村竜太朗 自身初アナログ盤リリース!!! ソロインタビュー

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最近、ジワジワと人気を集めているアナログ盤。デジタル配信が主流となっている今、なぜ人はあの素朴な音に惹かれるのか有村竜太朗は、そんなアナログ盤にかなり前から注目していた。


というわけで、このたび、個人活動作品2タイトルが、自身初のアナログ盤として同時発売が決定! 
しかも、アナログ化については、ロンドン・Abbey Road Studiosのカッティング・エンジニアであり、QueenやGenesis、The Beatlesなども手掛けてきたMiles Showell氏がカッティングを施している。
 

その仕上がりは、ぜひ実際に聴いていただきたい……
ということで、ここでは有村竜太朗に、アナログ盤の思い出を語ってもらいながら、その魅力を紐解いてもらった。

 

 

——まず、アナログ盤 (=12インチLPレコード「デも/demo」「デも/demo #2」)を出そうと思われたのはどうしてですか? 個人的には、温かみのあるアナログ盤の音は竜太朗さんの作る曲に合っていると思いますが。

有村竜太朗(以下有村):正直言って、バンド(=Plastic Tree)としても以前からずーっと出したいと思ってました。でも、やっぱりCDがメインの時代が続いていたし、なかなか実現しなかったんですよね。で、今回こういうお話になった背景としては、いまやCDより配信が主流になりつつある中で、逆にアナログのレコードとかカセットテープが評価されているからだ思うんです。なので、ラッキーなことに、ソロの作品に関してはアナログ盤を出せることになりました。僕自身はCDもアナログ盤も知っている世代ですけど、実はアナログ盤の音の方が好きなんですよ。

 

——やはりあの素朴な音……がお好みとか?

有村:単純に小学生くらいの頃にテレビで『ザ・ベストテン』を見て歌謡曲が好きになって、
その後、中1くらいから洋楽を聴くようになったんですね。親がレコード盤で映画音楽をよく聴いていたので、小学生から洋楽は何となく耳にしてましたけど。そういう経緯で、中学に入って自発的に洋楽を聴き始めた頃は、アナログ盤が主流だったんです。要はそこがスタートだったんですよ。だからCDが出た時なんて、最初はすごく否定的でしたね。音がクリア過ぎて。

 

——アナログ盤は大きいし、持ち運びも出来ないという不便なモノでしたけどね。

有村:音楽を外に持って行きたい時はテープでした。当時は携帯もない時代でしたからね。
お小遣いもそんなに多くないから、レンタルレコード屋さんで盤を借りてきて、それをテープに録音するっていう作業があったわけです。そのテープにも種類があって、“これはハイポジでいいや”とか“これは超大事だからメタルテープかな”とか、いろいろ思い出しますね……。

 

——懐かしいです、その感覚(笑)。

有村:録音するにしても、テープって録音時間が限られていて、再生しながら録音するわけですよ。でも、その時間と緊張感があるからこそ、余計集中して聴けたっていう。もうどれだけの価値があったのかっていうね。ただ音楽を聴くだけじゃなく、どこかで情を込めていた気がします。さらにはテープのインデックスにレタリングでアーティスト名とか文字を入れたりして。レコード盤の作品自体について語ることもできますけど、そういう周辺の思い出も大きいんですよね。例えば、レンタルレコードの「友&愛」には毎週行ってたなってこととかね。
『ベストヒットUSA』(80年代にアメリカのチャートを紹介し、PVなどをオンエアしていた洋楽の情報番組)とかラジオで聴いて気になったアーティストや曲名をメモって、盤を探しに「友&愛」までチャリンコで行ってました。

 

 

——では当時、メタルテープで録音するほど大事だったアナログ盤ってどれだったか覚えてます?

有村:覚えているのはマドンナですね。

 

——意外すぎるお答えが(驚)。

有村:特にマドンナの初期ですね。あの頃の曲、メチャメチャいいじゃないですか!

 

——「ラッキー・スター」が入っている1st(『バーニング・アップ』)あたりですか?

有村:まさにそれです。そのあと、『ライク・ア・ヴァージン』でブレイクしたと思うんで、
そのあとの3枚目『トゥルー・ブルー』くらいまでは聴いてました。「ラ・イスラ・ボニータ」(『トゥルー・ブルー』収録)とかメチャメチャ聴いてましたもん。死ぬほど聴いてました。PVもメチャメチャ見てたし、あんなにカッコいいアーティストはなかなかいないなと思ってました。マドンナ以外だと、シンディ・ローパーとか、マイケル・ジャクソンかな。むしろバンドものの音源は軽視してましたね。これはハイポジでいいやって感じで。でも、一度ハイポジで録ったものの、その後、やっぱりちゃんと聴きたくて、改めてレンタルしてメタルテープで録音し直したのがU2です。『ヨシュア・トゥリー』かな。
あと、フィリップ・ベイリーとフィル・コリンズの「イージー・ラヴァー」もメチャメチャ聴きました。

 

——どれも名盤ですね……。基本、メガヒットした曲を聴き漁ってたんですね。

有村:高校生くらいになったらガンズ・アンド・ローゼスとかパンクも聴くようになったんですけど、なぜかちゃんと音楽の歴史を知らなきゃいけないっていう考えがあったんです。
それで、ガンズを聴いたら、彼らのルーツミュージックであるところのエアロスミスとかローリング・ストーンズを調べたり。あとは、ビデオで『ウッドストック』の映像を見て衝撃を受けたこともありました。そうやって音楽を掘り下げていったから、レッド・ツェッペリンもアナログ盤で聴いていた可能性があるんですよ。ちょうど高2くらいだったと思うんですけど、同時になぜかロウソクにもハマってて。その時期、インド雑貨屋で買ってきた変なカレンダーを自分の部屋に飾ってて、ロウソクつけながら何回も何回もツェッペリンの「天国への階段」を聴いてたんですね。たぶん『レッド・ツェッペリン IV』っていうアルバムだったと思うけど。
そうしたら、母親がマジで僕がクルったと思って、父親に相談したという。

 

——いいエピソードですね(苦笑)。

有村:あと、違う方向から知った洋楽と言えば、映画の『悪霊島』で挿入歌だったビートルズですね。確か「レット・イット・ビー」とか「ゲット・バック」が流れていて、それを聴いてビートルズが好きになったことがあります。

 

 

——その入り方……(苦笑)。では、リアルなアナログ盤の話に戻りまして、初めて買ったアナログ盤は何でした?

有村:堀江淳の「メモリーグラス」です。

 

——出た! いきなり昭和歌謡曲!

有村:小2くらいの時に初めて買いました。

 

——随分大人びた小学生ですね(苦笑)。

有村:もしかしたら親が“これだったら買ってあげる”だったかもしれない。記憶が曖昧ですが……。でも、レコードが手に入ったことが嬉しくて、すごく聴いてました。

 

——思えば、そこから今につながる感性が確立されていたんですねぇ。

有村:そうなんですかね。 僕の中学時代って、時代的にちょうどアナログからCDに変わる時期だったんですよ。たぶん、僕が中2くらいの時かな、親父の会社のお兄ちゃんがサザン(・オールスターズ)の音源をCDで買い直すってことで、アナログ盤のコレクションを全部僕にくれたんですよ。しかも、サザンのアルバムジャケットって結構インパクトあるじゃないですか。それもあって、やっぱりサザンにハマりましたね。

 

——サザンのアナログ盤なんて、メチャメチャ貴重じゃないですか! そのコレクション、まだあるんですか?

有村:もしかしたら母親が捨ててしまったかもしれないです……。
前に“カビがはえてるから捨てちゃった”とか言ってたんで。

 

——く〜! まぁ、興味のない人からしたら価値なんてないでしょうしね。
そういう意味でも、アナログ盤って劣化してしまう欠点がありますよね。

有村:そうそう。針も痛むし。

 

——とはいえ、アナログ盤を再生した時のプツッ……プツッっていうノイズが、古い映画を再生した時のノイズみたいで味があるわけですよ。

有村:あれがまたいいんですよね。僕も好きなんです。何かがあるんですよ、あのあったかい音に。

 

——昔は大概の家にレコードプレイヤーがありましたけど、現時点で再生するハードを持っていない方も多いと思うんです。
でも、実は最近、廉価で出ているんですよね。

有村:そうなんですよ。スピーカー内蔵のやつですよね。

 

——ぜひともこの機会にぬくもりのある音で「デも/demo」と「デも/demo #2」を聴いていただきたい! 
ちなみに、当然のことながらジャケットサイズも大きいので、飾ってもいい感じになりそうですね。
「デも/demo #2」は何と、カラーのジャケットですし。

有村:色の三原色がテーマの音源だったので、全要素を合わせてカラーにしました。ジャケットの大きさも嬉しいですね。古いものが見直されている時代だからこそ、こういう企画ができたんでラッキーだったかな。僕自身は、ホントにアナログ盤の音が好きなので、今回の企画はすごく嬉しいです。時代に逆行しているみたいですけどね(苦笑)。CDとは違う音をぜひ体験して欲しいです。

 

 

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文:海江敦士