▽ 清春 × 有村竜太朗 対談インタビュー
——お2人はふだんから交流があるんですか?
清春:ありますよ。一緒に飲んだり。
有村:ゴハン食べたりとか。
清春:ただ竜太朗くんはけっこうアナログなので連絡手段がね。
有村:僕、LINEやってないんですよ。世の中のシステムから取り残されてるんです(笑)。
清春:いまどきショートメール(笑)。
有村:でも、大事な時にはいつでも馳せ参じますよ。あと、よくライブにも来ていただいて。
清春:数少ないミュージシャンの友達の内の1人ですよ。
有村:俺にとっては仲良くさせていただいている先輩ですね。2人だけで会うような関係という意味では唯一の。
清春:後輩は増えるけど、先輩はだんだん減っていくからね。
——そもそも仲良くなったキッカケというのは?
清春:生前、仲が良かった編集の人と取材の後に雑談していて「最近、誰に注目してるの?」って聞いたら「Plastic Treeがいいんですよ。このバンド、洋楽なんですよ」って言われてYou Tubeで見たら「カッコいいな」と。たまたま竜太朗くんを知っている共通の知人がいたので、「曲いいし、ライブ行きたいから紹介して」って頼んだんです。そしたら、その人が一緒に赤坂BLITZの僕のライブに竜太朗くんを連れてきてくれて。生で見て「おお! 本物だ!」って。それからプラの武道館にも2回ぐらい行ったかな。
有村:もちろん僕も清春さんのことは知っていたし、好きな曲もあったし、でも、まさか清春さんがPlastic Treeを気にかけてくれているなんて思いもよらなくて半信半疑で、僕は僕で「わぁ! 本物だ!」ってビビりながら楽屋に入ったのを覚えてて(笑)。
——自分のライブの楽屋にも関わらず?
有村:やー、めっちゃビビって。その共通の知人から「いいバンドだから紹介して」って清春さんが言ってたって話は聞いてたけど、本当のところはどうなのかわからないじゃないですか。
清春:僕はその編集の人の感覚を信じていたので。その前からPlastic Treeの存在は知ってたけど、ヴェールに包まれていたというか、竜太朗くんも年齢不詳でふんわりしてるイメージだったしーー。ライブを見てからはまわりの人にもプラのファンだって言ってましたよ。
有村:いやぁ、ありがたすぎて。
——それがいつ頃のことなんですか?
有村:『ネガとポジ』(2007年)ぐらいかなぁ。
——黒夢がデビュー(1994年)した時はまだPlastic Treeは結成されていませんよね。
有村:そうですね。バンドはやっていましたけど、僕は雑誌やTVで見たり、聴いたりしていて。(長谷川)正くんは当時、黒夢のライブを見に行っていたらしいんですけど、僕は東京にライブを見に行ったことがなかったので「こんなに綺麗な人がいるんだ」ってリアルに思ってました。
清春:やー、そんな。
有村:洋楽だとバウハウスにしても(セックス)ピストルズにしてもカッコいいジャケットのバンドは曲聴いてもだいたいカッコいい。実際にやっている音楽とファッションとキャラクターに統一感があるのってすごく大事だなと思っていて、そういう部分を清春さんからも教えてもらいましたね。
清春:教えてないですよ。
有村:盗んだんですかね(笑)。でも、自分もバンドでデビューしてミュージシャンになった立場でお会いできて良かったなぁと思いました。今回、ソロを出したことも清春さんの存在は大きいんですよ。アーティストって自分にできることがあるなら音楽だけじゃなくてものを生み続けていかなきゃいけないんだって。
清春:ソロの話したのってだいぶ前だよね?
有村:そう。いちばん最初に言って。清春さんにも「やったほうがいいよ」って言われてて。
清春:「いつかやろうと思ってるなら早くやったほうがいいよ」って。こんなこと言うとプラのファンの人たちに「オマエか?」って言われそうだけど(笑)、本人がやりたいって言うから。
——先輩としてアドバイスしたまで?
清春:経験者としてね。
有村:黒夢、Sads、清春さんのソロ、弾き語りといろいろ見させてもらって、自分もヴォーカリストで演者だから単純に「楽しそうだな。いろんなことができていいな」っていうのがあったんです。同時に「絶対、大変だよな」って。だっていっぱい曲書かないとならないし、ライブもいっぱいやらなきゃいけないしって。でも、清春さんを見ていて「やってみたいな」「やる価値はあるかも」ってぼんやり思ったんですよね。だから相談もしてたし。キッカケはいくつもあるんですけど、清春さんは大きなトリガーでしたね。
清春:言い方は乱暴だけど、もともとソロというか、Plastic Treeというブランドがあるとしたら、彼がデザイナーでしょ?。GUCCIもDiorもデザイナーってどんどん変わっていく。独立して自分のブランドを持ったとしても、そのテイストが好きな人はそのデザイナーが関わってる新しいブランドを見たら同じ匂いを感じるとかってあるじゃない。だから、バンドとソロの違いってみんな気にしてると思うけど、竜太朗くんのソロアルバム(『デも/demo』)を聴いて思ったのはソロっぽいところもあるけど、バンドっぽいところも多いじゃない。「これプラじゃん」と思う曲もあるかもしれないし、「これソロっぽくて寂しいな」と思う曲もあるかもしれないんだけど、Plastic Treeと有村竜太朗の違いを探すほうが無駄だと思うんだよね。なぜなら彼はバンドのデザイナーだから、同じじゃないと嘘じゃないかと。たぶん、竜太朗くんも同じ匂いを出そうとか考えてないんじゃないかな。10回ぐらい聴いたけど、有村竜太朗全開だと思いましたね。イコールPlastic Tree。
有村:デザイナーっていうのはすごくわかりますね。もともとPlasticTree用に作っていた曲だったし、清春さんがおっしゃる通り、バンドで形にできなかったものを仕上げることだけに特化してやっていたので、あまり何も意識してなかったし。いかに自分の理想に近づけることができるか、モチベーションを保てるかーー。レコード会社と契約して出すとかも決まってなかったので時間は山ほどあると思っていたし。
清春:タイトルはなんで『デも/demo』にしたんですか?
有村:曲にしなかったものがずーっとデモの状態で置いてあったっていうのもあったし、ダジャレじゃないけど、「でも、こういう曲もあったんだよな」っていう別の可能性みたいな“でも”でもあったし。
清春:なるほど。
有村:実験的な“デモンストレーション”みたいな意味もあるんだけど、いちばんしっくり来るのはデモテープ的な意味あいですね。曲を作ること=デモを作るみたいな。パーソナルなものじゃないですか。
清春:そうだね。持っていくためのものというか。
有村:はい。「この曲のデモ作ったんだけど」みたいな。それぐらいの温度感がちょうどいいなって。
清春:じゃあ、2作目がもう見えてますね。少なくとも『デも/demo』じゃないっていうところで(笑)。
有村:ははは。『続・デも/demo』かもしれない(笑)。
清春:ソロって勇気が入ることなんですよ。
——パワーも必要そうです。
清春:そうですね。両方やると忙しい。
——バンド脳とソロ脳がありそう。
清春:や、バンドのほうが楽だと思うんですよ。だってライブのMCもメンバーに振ればいいんですもん(笑)。ソロはプロモーションも全部やらなきゃいけないし、特にバンド出身のアーティストはソロのほうが大変だし、怖いと思いますけどね。
有村:言ってましたよね。
清春:ライブやっても、どこか打ち上げが寂しいとかね(笑)。でも、ヴォーカリストはそういう十字架を背負ってるわけですからね。
——ふだんもこういう真面目な話してるんですか?
清春:しますよ。好き嫌いとかこう見えて彼はハッキリ言いますからね。ふわっとしているように見えるけど、繊細なところと力強いところ、ロックなところ、アートなところ、全部持ってる。ロックなところしかない人とか繊細なだけの人はつまらないの。
——なるほどね。意外性があるんですね。話すテンポからしてふわっとしたイメージはありますけど。
有村:ものごしは柔らかいほうだとは思うけど(笑)。
清春:ガンコだよね。表現方法が。
有村:(笑)ガンコですね。
——へえ。いろいろ共通項がありそうですよね。お互いにファッションセンスにも長けているし。
有村:いや、いや、僕は盗んでばっかりで(笑)。
——飲みに行くと長〜く飲んでるんですか?
清春:まぁ、竜太朗くんは飲んでますね。
有村:僕はピッチが早い分、壊れるのも早いんです(笑)。
——清春さんはファンが知らない面も知ってるんですね。
有村:やー、ファンも知ってますからね。
清春:そうなの?
有村:FC旅行で平気で潰れて途中で退場とか(笑)。
清春:(笑)そうなんだ。竜太朗くんは酔っぱらうと僕の膝に頭乗せてきたりして。
——(!)膝枕ですか。
清春:僕は面白がってるんですけど、まわりが気を使ってくれたり。
有村:後からまわりに言われるんだけど、「清春さんに膝枕なんか、するわけないです!」って(笑)。
清春:1回じゃないですからね。かわいいですけど。
——そんなに甘えているとは。
有村:(笑)やー、「清春さん、聞いてくださいよ〜」って言ってる内に気を失ってるんでしょうね(笑)。
——今後は共演もありえそうですね。
有村:したいと思ってます。
清春:MORRIEさんとかバンド出身でカッコいいソロ出してる人と集まって何かやりたいですね。しかも芸能人っぽくない人のみ。今の大勢VS大勢みたいなフェスじゃなくて、1対何百人とか何千人みたいな関係のライブが何組も観れるっていう。
——今の内に清春さんに主催頼んでおいたほうがいいんじゃないですか。
清春:や、せっかくソロ出したんだから竜太朗さん主催で(笑)。
有村:いやいや(笑)ソロ出すずいぶん前に清春さんから、そういうことを言われたことがあったんですよ。いいなぁって。
清春:実はそういうイベントをやりたくてイベントタイトルとして“SOLOIST”というのを考えたんです。結果、それがソロアルバム(2016年)のタイトルになったんですけどね。
有村:ギターと歌でもピアノと歌でも歌だけでもいいし、シンプルな表現で声を届けられるような人たちが集まって、いつか、そういうことがやれたらいいですね。