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▽ re-arrange ALBUM「≒demo」制作メンバー6名対談

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有村竜太朗、ソロ最新作はre-arrange ALBUM「≒demo」。
リアレンジ担当ギタリスト3名を含む、制作メンバー全員の対談が実現!

――これまでもソロ楽曲のアレンジを変えてライブで披露するなど、実験的な試みをしてきた竜太朗さんですが、このたび、re-arrange ALBUM「≒demo」をリリースしましたね。制作のキッカケは何だったのでしょうか?

有村竜太朗:ソロの楽曲をライブで実演する時、客席に向けてやっているというよりは、ステージ内に入っていくような意識で、そこが普段やってるバンドとの違いみたいな部分で楽しくてやっていたんですよ。ただ、本編が終わると緊張感が途切れて、あとは来ている人みんなで騒ぎたいなって感覚でアレンジした曲が何曲かあって。ソロ活動も長くなって、ライブも重ねてきた時に、そういう盛り上がれる時間も楽しいねってメンバーで話してたんです。いつか全曲アレンジしてライブでやりたいねっていう話題は打ち上げでもよく出ていて。その話を俺とよくしていたのはhiroくん(有村の盟友でteのギタリスト。2021年11月30日に脳梗塞により死去)で。でも、彼が亡くなってからは、なかなかそこに向き合えなくなっていて。新しいものを作るという部分も含めてね。ただ、hiroくんが亡くなったあと、ギタリストの友達に何度かライブを手伝ってもらいまして。そこで、俺や残ったメンバー、関わってくれてた人たちといろいろ話して。やっぱり音楽活動は止めたくないなって気持ちになって。その第一歩としてアンコールでよくやっていた感じの、ライブの一体感に特化したアレンジでやってみるのもいいなって。僕のバースデーライブ(3月6日)周辺でそんな流れになったと思います。

 

――確かに全曲、躍動感を感じますし、これまでのライブの雰囲気とは違う空気になるんだろうなと思いました。楽曲のリアレンジには3人のギタリストが参加するという豪華な内容になりましたが、リアレンジ曲の割り振りってどう決まったんですか?

有村:あ~、これはもう僕から勝手にお願いしちゃったっていう感じなんです(苦笑)。その前に各曲のリズムを中心にデモを作っていったんですけど、これもスタジオで“せ~の、ドン!”で出来たわけじゃなく、まずタミフル(高垣)やトリ(鳥石)ちゃんとデータのやりとりをしてデモを練っていったら思いの外時間がかかっちゃって。

 

――リズムの基礎建築から始めたと。

有村:そうですね。基礎建築から始めた曲も多いですね。そんな感じで作ったラフのデモをギターのみんなに送ってそれぞれにまた練ってもらいました。

 

――ということはまず、リズム隊のおふたりにお話を聞いた方がよさそうですね。正直、原曲はライブで何度も演奏してきて体に沁みついたところもあると思いますし、そこをどう変化させていったんでしょう?

高垣良介:難しかったですね(苦笑)。体に沁みついたものから、できるだけ離れようとはしたんですけど、自然と似てくるというか……。でも、違うアレンジの曲を作りたいと思ったんで、1曲に対して3パターン、4パターンのバージョンを作ったりしてました。とはいえ、ノリは変えても、もともとあった雰囲気は崩さないようにしたいなと。

 

――確かにあまり進化し過ぎても、ファンの皆さんとしては違和感を感じますもんね。やっぱり一番意識したのはライブで演奏した時にアッパーなノリになるかどうか……というところですかね?

高垣:そうですね。ライブで楽しめて、みんなで盛り上がれるようなものを大前提にしていたので、自然とアッパーになったと思います。

 

――これまでのライブはお客さんが音楽に没入するような印象が強かったと思いますが、その風景が変わるかもしれないですね。

有村:まだこの感じでライブをやっていないので何ともですが(苦笑)。以前、アンコールでre-arrange ALBUM「≒demo」の企画の元になった曲を演奏した時、そこで本編とは違う手応えはありましたからね。今回、その続きがどう見られるのかなって。

 

――鳥石さんは最初にリズムを再構築するところで、どう臨みましたか?

鳥石遼太:曲に関してはどちらかと言えば、いい子というより、ちょっと悪そうなイメージで作っていきました。でも、もともとテンポの速い曲を、より速くしていったりするのは難しかったです。

 

――続いて、今回アレンジを担当した各ギタリストの皆さんにもお話を伺おうと思います。まずは小林祐介さんから。ご担当した曲は――。

小林祐介:4曲(「≒engeki」「≒jukyusai」「≒zajimachi」「≒fuyuu」)ですね。もともとのバージョンで制作に参加させていただいた「≒jukyusai」とか「≒fuyuu」は、なじみもあって大好きな曲だったんで嬉しかったし、あとは「≒engeki」や「≒zajimachi」もライブでサポート参加した時に経験していたので、それぞれの曲にちゃんと原風景があったんですよね。ライブ中にエモーショナルな気分になった曲を、竜太朗さんがおのずと選んでくれていたので、通じ合ってるなって気がしました(笑)。

 

――おおお~! さすがですね。

小林:もちろん、どの曲が来てもいいぞって気持ちはあったんですけど、特に思い入れのある曲を投げてもらってよかったです。

 

――リアレンジするにあたって、いちばんこだわったのはどういうところでしたか?

小林:テーマにしたのは、一言で言えば思い切りのいいエネルギーですかね。僕も⻯太朗さんも二十歳とか十代くらいのピチピチの若者というわけではないんですけど、今のタイミングで変化を恐れずにこういうエネルギーがこもった作品を作る気概というか、気合いが入るのってすごいことだと思っていて。普通はキャリアを積み重ねば重ねるほど、どんどん腰が重くなりますよね。良くも悪くも落ち着いてくるというか。それが全然そうじゃない。だから、デモ をいただいた時点で“これはこんな風に似合う感じで弾いみてました”っていう軽い気持ちで は全然エネルギーが足りないなって認識したんですよ。なので、僕はとにかくエ ネルギーが炸裂するようなイメージで、ちょっとくらい事故っても⻯太朗さんなら許してくれるだろうって信じてギターとアレンジを作っていきました。僕はどの 現場に行っても“やり過ぎ、もうちょっと普通目に”って言われることが多かったんですけど、⻯太朗さんはむしろ「いいじゃん!」っていつも言ってくれて。そのテンションで着地できたので、この作品に参加させてもらえたのは、ひとりのミュージシャンとして、 すごく学びが多かったですね。自分でもまだこういうことがやれるんだって再認識しました。

 

――お互い好きな音楽も共通した部分もありますし、やり過ぎどころか、すごく自然にハマったんでしょうね。

小林:いや~、やっぱり何でも飲みこめる竜太朗さんの懐の深さと、コアな部分の輝きの強さですよね。それが楽曲の持つ力に比例する気がするんです。何でも取り込み過ぎてコアがブレると散漫な音楽になってしまうけど、竜太朗さんは懐の深さと、コアの強さが不思議と共存しているんですよね。ソロだからこそ、余計そのメリハリが顕著に出たというか。改めてすごい存在なんだなって感じた次第です。

 

――大絶賛ですね! やり過ぎの話じゃないですけど、「≒zajimachi」はなかなか斬新な仕上がりになってますね。ここはすごく小林祐介さんらしいなって思いました。

小林:あ~、そうですか(笑)。よかったです!

 

――変化は楽しめましたか?

小林:とはいえ、これぐらい変化させようとか、あまりそういう意識はなくて。デモが送られてきた時点で、原曲と比べるとかなり別物だったんです。それを僕自身がちゃんと打ち返すことができたのかなって。

 

――あとは何度かライブに参加したことで、会場の熱もリアルに体験していたのは大きかったんじゃないでしょうか。

小林:そうですね。ライブでは竜太朗さんがすごく耽美的な部分も出していると思うんですが、普段接していると、やっぱりロックミュージシャンなんだっていう空気がにじみ出ているんですよ。カッコいいロックバンドのお兄さんみたいな部分と、女神様みたいなところがあって……。

有村:ははははは!

小林:撮影現場でパッと仕上がった竜太朗さんを見ると、一瞬脳がバグる気がしますね(笑)。

 

――そういえば、今回のリリースタイミングでは全メンバーの集合アーティスト写真が使用されていますね。確かにあの写真では竜太朗さんの女神感がすごい……。

小林:惚れ惚れするというか、目の保養になっちゃいますよね。

 

――小林祐介さんからは、かなりの賛辞が飛び出しましたが、聞いていて竜太朗さんはどう思いましたか?

有村:光栄の至りでございます(笑)。小林くんにしても悠介くんにしても耕治くんにしても、ライブにも参加してもらってるし、普段からお酒を飲んだり、たくさん話もしてきているので、ホントに急に話を振った意識じゃなかったんですよね。「ご相談が~」みたいな感じで、半分乗っかってくれるだろうって、わかっているところで声をかけさせてもらったんです(笑)。そこは普段から一緒に何かやりたいなって思っている人とたくさん遊んできてよかったなって思います。

 

――そう考えると、竜太朗さんってギタリストのお友達が多いんだなって気がします。

有村:ああ、そうですね。しかもみんな、hiroくんとも仲がよかった人達なんで。

 

――導かれたみたいな感じですね。

有村:確かに。まぁ、僕のソロプロジェクトではあるんですけど、気持ちとしてはバンドみたいな意識もあって。そういうつながりがしっかり形にできてよかったなって。そこはhiroくんにも感謝ですね。音楽の話を共有しててよかったなって思います。

 

――では続きまして、悠介さんにお話をうかがいます。今回、どういう形でお話をふられたんですか?

悠介:まず、話をもらって嬉しかったです。しかも大先輩からお話をいただけるっていうのは、これまでなかなかなかったんで。とても光栄な話だったし、同時にちゃんとできるかなっていう不安もありつつ。でも、最初に着手したのが「≒nekoyume」だったんですよ。たまたま僕が全然関係ないタイミングで東京にいたんですけど、そこで竜太朗さんが作業しているのを見に行って。そうしたら「≒nekoyume」を配信する期限が迫っているっていうので(苦笑)、そのまま僕は夜走りで名古屋に帰ったんですけど、移動の車の中でアレンジを考えて(苦笑)。帰宅して音を作りまして。なので、その時は僕が担当するとかっていう話じゃなかったと思うんですけど(笑)。

有村:そこに悠介くんがいたから(笑)。

 

――何という無茶ぶり(苦笑)。

有村:無計画極まりなかったです(笑)。配信は決まっていたんですよ。でも、僕があまり配信をよくわかってなくて……配信で出すってことはもうヤバい時期じゃんって感じで(笑)。そこで“あれ、悠介くんがいる”って。もちろん、アレンジはお願いしようと思ってたんですよ。でも、まず日にちがないなっていうところで、引きずり込んでしまった感じです。

 

――竜太朗さん、お友達に恵まれてますね(苦笑)。

悠介:一応、リズム録りをしている現場にいたし、すごく伝わりやすいアレンジだったんですよ。なので、ドラム録りをしている段階で、イメージは浮かんでました。そのおかげで移動中に精査できた感じです。

 

――まったく知らない曲じゃないですもんね。あと、やっぱりライブで盛り上がるような仕上がりにしたかったとか?

悠介:それもありつつ、あとはhiroさんが残していったフレーズは大事にしたいなっていうのがあって。全曲っていうわけではないですけど、なるべくどこかしらに楽曲の鍵となっているhiroさんのフレーズは入れたいなと。そこは意識しました。やっぱり竜太朗さんとhiroさんの長年の付き合いとか歴史は、僕の中でないがしろにしたくないという思いがありましたね。あと、お互いが好きな90年代とか2000年代のオルタナティブのオマージュみたいな要素を入れても面白いんじゃないかなっていう遊びも入れてます。聴いたら“あ、あれね”っていうわかりやすいことをやって遊ばせてもらいました。

 

――そこはニヤリとさせられるところですね。個人的には「≒tsukikagetotsukikaze」の冒頭でインパクトのあるギターが入っているのがツボでした。

悠介:これはデモをいただいた段階で、ああいうニュアンスのギターが入っていたんですよ。

有村:僕が上手く弾けない中、入れました。勢いだけ伝わってくれればと(苦笑)。

 

――おお、ではそれが伝わったということですね。

悠介:ああ、こういうことをやりたいんだなって。すごくわかりやすかったんですよ。

有村:僕としてはあまり得意としないダウンピッキングで頑張りました(苦笑)。悠介くんって、すごく繊細でキレイな音を作るし、メロディーのよさを活かしてくれるというか。それに、hiroくんのことをギタリストならではの感覚でリスペクトしてくれるし、僕が作ってきたものとは違う煌めきを入れてくれるんですよね。今回、結構多めに曲を担当してもらったんですけど、曲の表情を変えてくれるのが楽しみでした。

 

――では続いて……お待たせしました、耕治さんに伺います。耕治さんは今回のお話はどういう経緯でオファーされたんですか?

生熊耕治:今年の年明けに一度食事に行ったんです……あ、年末やったかな? そのタイミングで2023年はこういうことをやってみたいっていう構想の話をしていて。なので、「できることがあったら、いつでも言ってね」っていうのはあらかじめありましたね。で、3月の竜ちゃんのバースデーライブのあたりから、それがどんどん形になってきたような感じで。ただ、いつ僕に正式な話が来るのかな、どうなのかなって思っていたら、4月17日に“お願いします”って連絡が来てたんです。で、いつまでに納品しなきゃいけないのかなって返したら、“3日後で~す!”っていう(苦笑)。でも、年明けに“できることはするよ”って約束してたんで、やらせていただきました!

――いい人過ぎます……。

生熊:まずは1曲だけだったんで、何とか時間を作りました。

 

――竜太朗さんはたくさんの才能と、いい友人たちに恵まれたということですかねぇ。

生熊:hiroくんのことがあってから、小林くんとか悠介くんと一緒にステージに立ったりして、僕自身ももはやバンドメンバーのような感覚があったんです。メンバーだったら、そういう無茶ぶりって当たり前じゃないですか。だから全然イヤな気持ちも起こらず、逆に前のめりで参加することができました。

 

――リアレンジするにあたり、特に大事にしたところは?

生熊:たぶん、竜ちゃんの頭の中で組みあがっていたものとか、トリ(鳥石)やタミフル(高垣)が作ってくれた骨組みも踏まえて、ある程度直感的に理解できたんで、着地点を悩むことはほぼなかったです。悩んだ部分で言うと、やっぱりhiroくんが弾いたギターですよね。もしhiroくんが今、この作品に参加したらどういうギターを弾くんだろうって思いながら、そこを辿って弾いた感はあります。

 

――結果的にhiroさんに導かれたところはあったのかもですね。

生熊:さっき、悠介くんが言っていたみたいに、僕も大事にしていたhiroくんのフレーズをいかに新しいものに昇華させていくのか……そこが今回のいちばん大きくて難しいテーマなのかなって思いました。結果、仕上がった音源の全編をニヤニヤしながら聴いてました(笑)。竜ちゃんがhiroくんのことで辛かった時期もあっただろうし、もちろん今も乗り越えてない部分もあると思うけど、こうやって作品と向き合って新しいものを作って前に進もうっていう心意気が、今回いちばんの聴きどころなんじゃないかなって思います。

 

――いい話じゃないですか!

有村:耕治くんにお願いした時は、焼き鳥屋にふたりで行ってて(笑)。

 

――そんな状態でサラッとオファーしていたとは(笑)。

生熊:「なのでギター弾いて欲しい」「全然弾くよ」って話で終わって、あとはいつものようにバンドの話とかしてました。

 

――このリリースを受けて、ライブツアーもスタートしております。ファイナルが8月5日の下北沢シャングリラですね。これまでとは違う雰囲気になりそうなんで楽しみです。

有村:そうですね。実際、この音源ってリハスタとかで一斉に音を出して作ってないんですよ。もちろん、ライブで先行してやっている曲はあるけど、その温度感をたよりに、すごくいい形に昇華させたいと思ってるし、見に来てくれるお客さんと一緒に曲を作っていきたいですね。これからも長く愛されるような、新しい楽曲としてライブでも残していきたいと思います。

とりあえずこのメンバーとスタッフ全員で音源を爆音で聴く打ち上げがやりたいなって思ってます (笑)。みんな音楽が好きで今回の制作の話をしたり、各自バンドの話をしたり、そういうのが楽しいメンバーなんです。みんなで集まったのは撮影の時くらいだったし、その打ち上げは絶対やりたいなって思ってます。

 

――いろいろ無茶ぶりも多かったでしょうし(笑)、存分に打ち上がってください!